脱力・力が入らない
脱力・力が入らない

「ペットボトルのふたが開けられない」「歩いていると足が重くなってつまずく」「急に立ち上がれない」といった症状は、単なる疲れや加齢のせいと見過ごされることがあります。
私たちが体を動かすための「運動の指令」は、脳から始まり、脊髄、運動神経、そして神経と筋肉のつなぎ目を通って、最終的に筋肉へと伝わります。この「運動の指令の通り道」のどこかに障害が生じると、思い通りに体を動かせない「脱力」として現れます。
脱力の現れ方は、脳梗塞のように「突然、片側だけ動かなくなる」ものから、「徐々に力が入らなくなる」「夕方になると症状が悪化する」ものまで、原因によってさまざまです。当院では脳神経内科の専門医として、「どこで神経や筋肉のトラブルが起きているのか」を見極め、適切な治療や検査につなげます。
脱力の原因となる病気は非常に多岐にわたり、ここに挙げるのはその代表的なものです。原因は、運動の指令が伝わる経路のどこに障害があるかによって、大きく4つに分けられます。
突然、体の片側に力が入らなくなる「片麻痺」が特徴的です。ろれつが回らない、顔のゆがみなどを伴うことが多く、緊急の対応が必要です。
背骨の変形や椎間板の突出によって脊髄や神経が圧迫されることで、しびれや痛みを伴う脱力が生じます。
風邪や胃腸炎などの感染症にかかった後、数日〜数週間かけて手足の脱力やしびれが進行する免疫の病気です。多くの場合、足から手へと進行し、適切な治療によって改善が期待できます。
ギラン・バレー症候群と似ていますが、2ヶ月以上かけてゆっくり進行する、あるいは再発と寛解を繰り返す病気です。免疫療法が有効です。
感覚障害を伴わず、左右非対称に手足の筋力が低下する慢性疾患です。免疫療法による治療を行います。
運動神経が徐々に障害されることで、全身の筋力低下や筋萎縮、嚥下障害などが進行する指定難病です。早期の診断と、療養体制の整備が重要となります。
神経から筋肉への指令の伝達が、自己抗体によって妨げられる自己免疫疾患です。
「筋肉を使い続けると力が入らなくなり、休むと回復する」「夕方になると症状が悪化する」のが特徴です。まぶたが下がる・物が二重に見えるといった目の症状で発症することが多く、適切な治療によって症状の改善が期待できます。
重症筋無力症と似た症状を示しますが、肺がんなどの悪性腫瘍が背景に隠れていることがあり、その場合は腫瘍の精査と治療が優先されます。
筋肉そのものに炎症が起きたり、筋肉の構造的な異常によって筋力低下が進行する病気です。
階段の昇り降りや、立ち上がる・腕を上げるといった動作のしづらさで気づかれることが多くあります。
血液中のカリウムなどの電解質バランスが崩れることで、突然、間欠的に手足の脱力が起こることがあります。
背景に甲状腺の病気が隠れていることもあります。
このほかにも、感染症、お薬の副作用、栄養障害、内分泌疾患など、脱力の原因は多岐にわたります。
脱力がいつから、どのように始まったのか、左右差や時間帯による変動の有無、随伴症状などを詳しく伺います。神経学的診察によって、脱力の分布や筋肉の萎縮、反射の状態などを確認し、運動の指令の通り道のどこに障害があるのかを絞り込みます。
筋肉のダメージを示すCK(クレアチンキナーゼ)の値、電解質、甲状腺機能、自己抗体(重症筋無力症の抗AChR抗体など)を調べます。
神経伝導検査や針筋電図、脳・脊髄のMRI検査などは、診断のために重要な検査ですが、当院では実施しておりませんので、必要に応じて連携医療機関に手配いたします。検査結果をもとに、診断・治療方針のご説明と、その後の継続的な治療を行います。
原因疾患に応じた治療
脱力の原因はさまざまであり、それぞれの病気に応じた治療を行います。当院で対応できる治療は当院で行い、入院や高度な検査・治療が必要な場合は、連携医療機関と協力しながら継続的にサポートいたします。
指定難病の手続きと社会的サポート
ALS、重症筋無力症、CIDPなどは国の指定難病に該当し、症状の程度に応じて医療費助成の対象となります。当院に継続して通院されている方については、難病指定医として必要な診断書を作成し、介護保険の導入も含め、ご本人とご家族の生活を継続的に支えます。
リハビリテーションと生活指導
筋力低下や疲れやすさに対して、無理のない運動の取り入れ方をご相談します。
脱力症状の中には、命に関わる事態が進行しているサインが含まれていることがあります。以下のような症状がある場合は、速やかな受診、あるいは救急要請が必要です。
上記以外にも、気になる症状があれば、当院の脳神経内科へご相談ください。
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